• 2015.04.26 Sunday
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生死不明の10日間
 
生死不明の後遺症一年後の話。




 『良い全力だった!お前に1回だけチャンスをやろう。』


反響する声に目を開く
――ここは、どこだ…?
肌に触れる空気は湿気を孕んで、光が辺りを淡く照らしている。
どこかは分からないが、地下に居ることだけ理解できた。
薄目越しの青白く光る天井は、墓地を思わせる。

――これは、夢か…?

試しに指先を動かしてみる。
脳から意思を伝え、筋肉の軋む感触と手の甲に感じる冷たい石の肌触りに、身体は動くと確信する。
感覚も申し分ない。普通だ。

瞬間、最後の視界がフラッシュバックする

道を埋め尽くす数百ものジャグランツ。
見渡す限りのどす黒い赤。
バラックの崩れる轟音。
肌を震わせる殺気。
倒れた仲間達。
刃に腕が落とされ、
切れ味の悪い刃に腹まで割かれ、血の池に沈んだ自分。

そうだ。

身を起こし、強く目をしばたく。

思い出した。

自分は確かに致命傷を受けた筈。
何故助かったのだろう。

『それは、腕の良い俺様と俺の手下達の功績だ!』

声に振り返りそこに居たのは
ジャグランツ並みの体躯を持つ巨漢と後ろに控える手下達だった。

圧倒的な覇気と、響き渡る声に、格の違いを感じ、押し黙る。
自分は彼らに生かされたらしい。

『俺様は黒刃使い・ガブラス!』

朗々として、しかし、がなるような声は腹に響き視線が外せない。

『傷は治した、武器も拾ってやった。』

反響と双眸に射抜かれ、自然と向き合う。
足元に転がる一対の爪は言葉を真実と肯定していた。

『あとはお前次第だ。』

意味を問う前に、忽然と消えた気配。急に現実味を帯びた感覚は周囲を探る。
残ったのは自分と、迫る敵の気配のみ。

……なんつー勝手だ。

一方的な意思に思わず毒づき、次には笑みが零れる。

死はすぐ傍に居ると理解していた。これからも変わらないだろう。常に終わりはすぐ傍にある。
それでも、今は生きて帰れる喜びが勝った。

得物に腕を通す。
腕を包む布の感触と指先を覆う金属の感覚。
シャラリと鳴る銀鎖に精神を研ぎ澄まし、熱く猛る血と共に変化する腕を振るった。

「……汝、死に臨む者よ。」

ここで途切れない。
切り拓く機会を得た今に、感謝すらした。地下迷宮へ歩を進める。生前、残した言葉を少し変え呟きながら。

「道は自分が切り拓く。」

この命が尽きるまで。

」」」」」」」」」」」

猟犬は当時を振り返り語る。

後は 戦い続け歩み続けの10日間だ。毎日、日が変わる時に、生きる意志を問うてくる。応え、戦い続け 生還した訳だな。
途中でシャラに会った時は運が良かったぜ。

笑みすら浮かべながら軽く語る内容は壮絶だ。

まぁ そんな訳で、独りの時は眠れねェンだよ。どうも、何かに襲われそうでな。

年齢に似合わない笑みを浮かべながら、傍らの体温へ顔を埋める。どこか縋る腕は、離すなと、言外に告げるようだった。
  • 2015.04.26 Sunday
  • 22:57
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