• 2015.04.26 Sunday
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遥か昔の小説発掘〜
何年前だ、最低4年前?

それを去年リメイクして〜

更に手直ししようと残してたやつ〜

オリジナルの世界のヤツなんで興味ない人は見るな?
そしてラブラブ甘ものが苦手な人もスルー推奨〜
オイラの自己満足爆発〜

OKな人はどうぞ。



○親の背をみて子は育つ○

ある晴れた日、冬生まれのボクは初めて暖かい季節を迎えた。
空気も気持ち良くてなんだかわくわくしてたら、
開けっ放しの窓からピンク色のひらひらが部屋に入ってきた。
窓から顔を出すと更に1枚、鼻先を掠めてく。
花びら…かな?
触ろうと前足を伸ばすけど届かなかった。

ひらひら
ひらひら

後から後から降ってくる花びらは雪みたいだ。
なんだかじっとしてられなくて、小さい羽で窓から羽ばたく。
まだ幼い前足や体じゃぁ触るのもやっと。
でも楽しくて、何時間でも飛び回ってた。

これは僕の、生まれたばかりの記憶。

まだ人型になれなかった頃の、キミに出会う
ずっとずぅっと昔の話。

○親の背を見て子は育つ○

太陽が高くなってきた。
そろそろ家に戻らないとみんな心配するかな。

ふよふよと空中に浮くボクの背中には白銀の小ぶりな羽がある。
ボクは人間じゃない。精霊。大気の精霊。
だから、生まれてまだ3ヵ月だけどちゃんと必要な知識と能力は持ってる。
姿は仔犬に似てて丸みを帯びた輪郭。
瞳は青銀色で、ふさふさの毛皮も背中を覆う鬣も純白、体と同じぐらい長い尻尾で大気をゆらゆらと遊ばせてる、獣の姿。

窓から戻ってみるとキッチンからいい匂いがした。
朝ご飯は食べたけど、今日はピクニックだからお弁当かな?
鉄の扉をくぐったら長い亜麻色の髪をおさげにした女性(ヒト)が鼻歌を口ずさみながら料理してる。ボクの母さん。

「きゅぅ?」
「あ、シュルクおかえり。」

覗き込んだそこに不思議な食べ物があった。
黄色くてやわらかそうな楕円のもの

「母さん。それ なぁに?」

たどたどしい言葉で首を傾げるボクの姿に、
母さんはそれを手に取って優しい顔をした

「これはね。「卵焼き」って言って、すごくおいしい食べ物なんだよ?」
「……たまごやき?」

鼻を近づけて嗅いでみる。
やわらかくてほのかに甘い香り。とても良い匂い。
他にも骨付きの鶏揚げとか山菜のあえ物とか煮つけとか、
色々あったけどコレは一番やさしい気持ちになれる匂いだ。

「……食べてみる?」

じっと見ていると微笑みながら「たまごやき」を口元に持ってきてくれた。
前足で受け取るけど、ちょっと熱い。
それでも持ってられない程じゃないから一口食んだ。

「〜〜〜っvVV」

口に入れた瞬間に広がる卵の香り。
やっぱり少し熱かったけど、ほのかに甘くゆっくり熔けていく。

「………おいしい?」

思わず顔がほころんだ。
ものすごく おいしい。
こくこくと頷き、手に残る「たまごやき」をほおばる。
一口食べる度に尻尾が左右に揺れた。

「よかった。気に入ったみたいだね。」

汚れてない手でやさしく頭を撫でてくれて、余計に嬉しくなる。

「おべんと出来るまで、もう少しかかっちゃうから、待っててね?」
「うんっ!」

汚れた前足を拭いてもらって、母さんはお弁当におかずを詰めてく
面白くて手元を見つめていると、上の階で空気が動いた。

そう言えば説明してなかったね。

この家はボクの生まれる前、
父さんと、父さんの友達のビィルが崖をくりぬいて造った洞窟型の家なんだ。
なんでかはわからないけど構造はちょっと複雑。
罠とか分かれ道、隠し部屋がいっぱいあるの。

簡単にまとめると、一階にお客様用リビングと普段用リビング、
父さんの部屋、母さんの部屋があって、
二階にビィルの部屋兼研究室、資料室がある。
ビィルはボクみたいな精霊を研究してるんだって。

でも、ボクの部屋はまだ無いの。
今、父さんとビィルが造ってくれている最中なんだ。
昨夜もだいぶ遅くまで造ってくれていたから、
起きてくるのはもっと遅いかなって思ったけど、父さん起きてきたみたい。

のろのろとした緩慢な動きで降りてきてるけど、
母さん、まだ気づいてないみたいだな。

キッチンを出て、リビングに向かう。
キッチンとリビングはつながっていて、ちなみにここは普段用リビングだ。

岩戸から音も無く、艶のある漆黒の髪の男のヒトが姿を現す。
眠そうに半分伏せられた瞳は夜空の色、気だるげに壁からすり抜けてきた。
実はこの岩戸、光の屈折を利用したホログラフなんだよね。
ビィルが造ったんだって。

「父さん、おはよう。」

尾をはたはたと揺らしてお出迎え。
父さんはすごく低血圧だから返事しない。
でも気にしないよ。代わりに頭を撫でてくれるから。

「母さんなら、キッチンにいるよ。」

無言でぼーーっとキッチンに向かう後姿をふよふよと追いかける。
箱に向かう背中は丁度あたらしく焼いた卵焼きをつめていた。
近づく父さんにまだ気づいてないな。

やさしい いい匂い
ほのかに甘い香り

無言で父さんは母さんの細い手をつかんで、
持ってた卵焼きをほうばった。
母さんの指ごと

「…………………。」

すごい早業。
驚いて母さん固まってるよ。
石みたい。

「…………甘いな。」

しれっと、完全に目を覚ました父さんは母さんの指を舐めた。
おいしいのかな?

「………もぅっ………ウォルクっ!!//////」

……声は怒ってるのか違うのか、よくわからない。

「……あれはな、シュルク。喜んどんねんで?」
「……そうなの?」

いつの間にか降りてきていた、左顎に十字傷をもった金髪の男のヒトを見上げる。ビィルだ。

「せや。女っちゅーもんはな、あんなふうに怒ってるわけでもなく顔を赤くしたら、喜んどる証拠やねん。よう、覚えとき。」

含み笑う横顔を見上げながら首をかしげる。

……たしかに、母さんは父さんの事が大好きだ。
もしかしたら、父さんもあのやさしい匂いで優しい気持ちになっているのかもしれないな。
証拠に今、父さんが浮かべたのはすごく優しい笑顔だから。

「いつか、お前にもできんねんやろうなぁ………楽しみやわ。」

つぶやいて撫でてくれる大きな手に笑み返した。
言っている意味は、よくわからなかったけど。


あれから、約50年
僕はキミに出会って恋をした。

「風理ちゃん できた?」
「まだよ。そんなすぐにできないわよ。」

愛しい存在を手に入れて始めての夏。
覗いたキッチンの先には、唯一無二の妻の姿。

どう頑張っても頬が緩むね。

今日は近隣の泉にデート予定。
異界から、嫁に来てくれた彼女にこのあたりに慣れてもらうためだ。
作ってくれている弁当を覗き込むと、今まさにおかずをつめている最中だった。

「…………。」

楽しそうに鼻歌を口ずさみながら詰める手が卵焼きに移る
丁寧に扱う細い手は色白く、傷はあっても目立つほどじゃない。

綺麗な手。
黄色い、やさしい気持ちにさせてくれる食べ物。

触れたい
食べたい

二つの欲が重なって。ふと、いつかの両親の姿が思い出された。

……そっか。こうすれば良いんだ。

背後から卵焼きを彼女の手ごと引き寄せてほお張る。

彼女の指ごと

「――― ッ?!/////」

口内に広がるほのかに甘い香りと
舌先に感じる彼女の指先の感触

「うん。おいしい。」

真っ赤になって絶句した彼女にとびきりの笑顔で微笑む。

背中に、息子の視線を感じながら。
  • 2015.04.26 Sunday
  • 12:00
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