• 2015.04.26 Sunday
  • スポンサードリンク
  • -
  • -
  • -
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

004:涙が出た
久々のディス代理背後でっす

久々更新、今回の萌えフレーズ100題
裏テーマはズバリ、「ディス、パパになる。」

パクリ厳禁
自己満足万歳

楽しみくだせぇっ
つい先刻の事だったはずだ

「もうすぐ産まれるねんで?」

ユキはそうはにかんだ。
幸せそうな微笑みを浮かべ大きく膨らんだ腹部を大事そうに撫でる。
男まで幸せな気持ちになるほど優しい笑みだった

日が傾き、穏やかな日で終わるはずだった

「……ぅ…っ、…。」

太陽が暮れる頃に

女は突然倒れた

「「「「ユキッ!」」」」

「……破水が始まっている…っ、……ディスッ!手伝って下さい!」

朱のさす小屋の中、有鱗種の叫びが響く。

何が何だか分からず
言われるままに急ぎ妻をベッドへ運んだ

眠るはずの空間が、緊迫感に包まれて戦場と化す

数時間に及ぶいきみ声の中、日は既に落ちた。
慌ただしく有鱗種の指示に従いお湯やら清潔なタオルを運ぶ。

もう一人の妻、ヒサメも身重の身だ。動けるのは有鱗種の妻、そして男の二人しか居ない

「ディス!もっとぬるま湯をッ!ハシェルは布をお願いしますっ!」
「……ッ!」
「わかったわ!」

声が出ず、言われるままに走る

ユキが倒れた時から頭は真っ白だ。
雑音が遮断され
やがて意識していない体を別の誰かが無理やり動かすような感覚すら覚えていた

「ハシェルッ!出血が…っ布が足りませんッ!」
「ッ、ディス!洗面台の左の棚に新品があるわっ!取ってきてっ!」
「………ッ!」

声が遠くに聞こえた筈が体は勝手に動く

まるで別の誰かの体に自分の意識のみが宿っているようだ

あぁ、そうか
これは「俺」じゃないのか。

沈んでいきそうな自我
体は勝手に動き指示を全うしていく
どうせ体は動くのだ
このまま沈んでしまおうか

「…どうか無事で……。」

その声はやけに鮮明に響いた
手を祈りの形に震える声
振り向けばユキの手を両手で包み握り締めるもう一人の妻の姿

―― 無事とは どういう意味だ

その時ばかりは脚が硬直した

どうしようもない焦燥と緊迫感の中でいつの間にか完全なパニックを起こしていた

「ディス!ぬるま湯をっ!」

ラギウのセリフすら遠くに感じて、意識が外界と遮断されていくのを自覚する

――死ぬかもしれないのか

「ディス!何をしているのですっ!!」

やっと通じあえた
やっと 愛せた
大事な 大事な伴侶を
また 失うのか

焦りを含んだラギウの声も耳に入らない

悪い考えは加速し思考を浸食する

「ディス!」

拒絶しはじめる。

もう 嫌だ
何もミタクナイ

「…ディスっッ!!」


俺二現実ヲミセナイデ…



「――馬鹿野郎ッ!!」

――― パァンッ!!

「………ァ……。」


左頬の衝撃。
突然の事に反応できない

じわりじわりと熱が集まる
平手で打たれたのか
打ち終えた姿のままで荒く息をする妻の姿を視界に収めた

「…ヒ……サメ……」

「しっかりしろっッ!!!」

目尻に涙を浮かべ
真っ青な顔で怒りに顔を歪めた
ヒサメの怒声が体に響く

「お前はッ、父親になるんだろうっ!!!!」

泣きそうな吼哮に似た声

不安で心配で仕方無い
それは自分も同じだと訴える目

体に感覚が戻る
目が覚め、同時に頬に痛みが広がった。

「………スマン…。」

一言詫び床を蹴り走る。
そうだった。
呆けている暇は無い
絶え間ない苦痛の声

ユキは頑張っている

ならば、自分が怯んではいけない
できる事をしなければならない

早く新しい湯を作らねば。布も足りない
やるべき事は沢山あるのだ

「……布と…湯…ッ」

階段を一足に飛び降り音無く最短距離でキッチンへ向かう

リビングを抜けると目の前のかまどがやかんを蒸かしていた

どうやら、ハシェルが用意していたらしい

「……流石だナ。」

布を肩に持ち
汲み置きの井戸水と共にやかんを持つ

器用な事だが慣れれば大した事はない

そのまま家具をすり抜け階段を滑るように駆け上がる

長いようで短い廊下を走り寝室の扉を前に体重を置いた

時刻は深夜

部屋以外は静寂に包まれ音がよく通る

木造の床が軋む瞬間に例外なくソレも響いた


―― ほぇ゛あ゛ーっ

「……ァ…?」

古びた寝室の扉
木製のそれを前に動きを止める

「…………。」

何を意味するか理解するのに数秒を要する

目が見開かれた

―― ぇぁ―っ

小さな か弱いモノが
初めてあげる命の叫び

聞いたことは一度ある
数ヶ月前にハシェルの子供のものだ

その時は、こんなにか細く力を感じる声があるのかと感心したものだ

「…………。」

間違いない

生まれた
子供が生まれた

ユキは無事だろうか

扉越しにいつかの
どす黒い池に沈んだ恋人の姿がよぎる

躊躇した

扉を開けて良いのか
それでも、手はゆっくりドアノブを捻る

「ディス!生まれましたよ!!元気な男の子です!」

満面の笑顔があった

「…大丈夫よ。不思議ね…ユキの出血も止まったわ。」

ハシェルが笑顔で近づいて自分の手からやかんと水、清潔な布をもって行く

用意していた大きな桶でぬるま湯を作り、ラギウは赤く汚れたままの小さな命を清め、ハシェルはユキを労い清める

ヒサメはユキの手を握ったままだ

徐々に小さな叫びが収まり、清められた小さな命は白い布で包まれる

「……ユキ…お疲れ様です。元気な男の子ですよ。」

ぐったりとしたユキは笑顔を浮かべる
もうすぐ生まれると嬉しげに言った時よりさらに嬉しげに

「………。」

どう、声をかければ良いのだろう。
わからずに、ディスはやりとりの間ずっと立ち尽くしたままだ

気が抜けたと言うか
なんと言うのか

「…お疲れ様…ユキ…。」
「ヒサメさん…ディスは……?」

尋ねるか細い声に体が強張る

ヒサメが肩越しにこちらを見、静かに笑んで場所をあけた

探してさ迷う朱混じりの双眸と目があう
不安げに揺れていた気配に一瞬で安堵がにじんだ。
ずっと寂しかっただろうか。

「………ディス。」

とても安心した声だ

「………。」

ぎこちない動きでベッドへ歩み寄る
ユキの真っ青な顔は可哀想なほどやつれ、どれほどの労力を要したかが分かった。

頬に触れる
少し冷たい

「……えへへ///」

嬉しそうなユキに胸が疼いた

言葉が出てこない

力の限りに抱きしめたい衝動にかられ、理性を総動員してこらえた

「……ユキ…」
「…………ん///」

代わりに想いを込めて唇を重ね、額同士を合わせる

ベッドヘッドへ体重を預け彼女へ負担がかからないよう気を配りながら必死で続く言葉を探した。

しかし、どれもしっくりこない

『大丈夫か』?

違う

『ごめん』?

何がだ

『無事で良かった』?

これも違う

「…………。」

何かあるはずなのだ

もっと、気の利いた何かが

彼女への気持ちを表現する言葉が


「………お疲レ。」


「……………。」

思いついたまま口にしてしまった。
後悔した上に内心で自嘲する

馬鹿か
なんだそれは
命をかけた奴にそれだけか

しかし、これが自分の思いつく限りの精一杯だったのだ

「っ、…ふふ……ありがと///」

それでもユキは嬉しそうにクスクスと笑う

気持ちは伝わったらしい。良かった

「ディスねぇ〜…。」
「らしいですね。」
「……お前らしいよ。」
「煩いナ//」

そこまで笑わなくても良い気がする
流石に照れくさい

「……ディス。」

穏やかな低音に顔を向ける。
漆黒の有鱗種、ラギウの腕には白い塊が抱かれていた

「……こちらへ。」
「…………………。」
「……大丈夫ですよ。」

静かに笑われ無言で歩み寄る
一歩がこんなに重いと感じたのはいつぶりだろうか

厳かな儀式のようだ

「………。」

ラギウは笑顔で待つ
戸惑い躊躇しながら歩み寄る心境を汲み取ってか急かすことは無い

どんなにゆっくりでも数歩でたどり着くのだ。急かす必要も無いか

「…抱いてあげて下さい。」

そっと差し出された白い塊
触れれば壊してしまいそうで少し躊躇した

「…まだ首が座っていません…気をつけて。」
「……応。」

ラギウの抱き方を真似てゆっくり移す

なんて 小さい

これは 本当に生きているのかと疑いたくなる

ピンク色に近いしわくちゃの肌
申し訳程度に生えた白い髪
楓の葉のように小さい手に限らず、どれをとっても信じられない程小さい
体はどうなっているのだろう

思った瞬間に
小さな瞼が開いた

目を見開く

この赤ん坊は生後一時間も経っていない

目が開くはずはない

「………、」

なんだ
今日は絶句デーか?
心中に冷静な自分が居るのがまだ救いだ

見開いた目に映る真紅の小さな瞳、猫の瞳孔

冷静でなければ落としていただろう

それは自分と全く同じ双眸だ

『禍人』の証

「―――………ッ、」

危ない。と感じた
確信に警鐘が脳裏に響く

この小さな命も、忌まわしい『運命』に襲われる。
禍人の双眸がその証なのだ。

この小さな命は生まれながらに苦しみ、辛い現実を生きなければならないのか

自分のように

一族を失い、
『生きる術』と『思考』を与えてくれた巨狼の命を落とさせ
『無償』を教えてくれた恋人を殺した

大切な者の命を奪う
奪ってしまう身を裂くような苦しみがこの赤ん坊に待っているのか。

『運命』から逃れられずに

なんて酷い
むごすぎる

たまらず目を伏せた

「………。」

しかし
何故だろうか。

小さな命にむごい運命が待っている

何故生まれてきた。とすら思う

苦しみ生きる事が決定しているのにどうして生まれてきた。

思うようにならないこの世界
確かに生きる保証すらないのに
それが、わかっているのに
目頭が熱い
どうしようもなく

嬉しい

そんな現実に。
この世界に。
生まれてきた事実が、小さい命の大きな産声が、とても嬉しく愛おしい

失い苦しみ、もがき続けて
時に迷い自ら命を絶つ事すら考えた。

情けなく、不甲斐なく
存在を否定され踏みにじられようとそれでも足掻き続けた

死を決して望まない『獣の意志』

この小さな命こそが

自分の勝ち得た 集大成

自分が生きる理由であり意義であり
傷だらけで生き抜いた
自らの存在の証明




ああ



「…俺は………。」



本当に


よく


「『意志』を継げたんだな…。」



よく、
生まれてきてくれた。



」」」」」

タイトルがそのままラストの状態だ
  • 2015.04.26 Sunday
  • 10:20
  • スポンサードリンク
  • -
  • -
  • -
スポンサーサイト
Comment:
Add a comment:









CALENDAR
SMTWTFS
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< July 2019 >>
ENTRY(latest 5)
ARCHIVES
CATEGORY
COMMENT
PROFILE
MOBILE
qrcode
LINK
無料ブログ作成サービス JUGEM

(C) 2019 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.